ロードヒポキシス

可憐、無意識

自作キーボードのケースをアクリル板でいい感じに作る2023

この記事は の18日目の記事です。 前日は†🍆ADeL_iPSE2🍆†さんの「Blender でキーボードケースのレンダーを作る」でした。Blenderは毎秒挫折しているので作った人は宇宙人だし扱える人も宇宙人だと思っています。

zenn.dev

自作キーボードのケース

パソコンのキーボードを自作する自作キーボードにおいてケース部分はキーキャップの次に目に入る重要なパーツです。また見た目だけでなくキーボードのサイズが決定されたり打鍵音&打鍵感を左右する部分でもあります。

一般的なキーボードはABS樹脂などのプラスチックケースが多く、より高品位な打鍵感を求めるカスタムキーボードではアルミケース、ポリカーボネートといった様々な素材が使われています。一方で国内の自作キーボードの中でも電子工作のようなホビー色の強いものにはアクリル板が使われていることが多いのはご存じの通りだと思います。

なぜアクリル?

アクリル板が使われることが多い理由として、

  • 比較的安い
  • 透けててきれい
  • 設計が楽

などがあげられます。レーザーカッターなどで安価に加工ができ、ガラスのように透けて様々な色が存在しているため見た目を豪華にしやすく、また設計するにしても(レーザーカットの2次元の図面作製で)難易度が低いです。

個人的なこだわりとして

アクリル積層ケースの構造

一方でアクリル板は文字通りの板なので、立体的なキーボードのケースを構成するためにはちょっと頭を捻る必要があります。もっともポピュラーに使われているのはアクリルを積層するタイプのケースです。

図のようにアクリルを基板やプレート、キースイッチを収める厚さになるように重ねていき、上下からネジやスペーサーなどで固定します。このタイプは板を重ねていくだけで完成するので図面を引きやすいなどのメリットがあります。しかし最も外側のものを除いた間に挟むレイヤーがアクリル板の大半を占めるうえに利用効率があまり高くなく、アクリル板の費用が高くなりがちというデメリットがあります。

アクリル板のコストを気にして間に挟むレイヤーをなくすと今度は使っているうちにホコリが入り込んでみっともない見た目になるのがさらに良くないです。ホコリは大敵です。なのでほどよく密閉できそうな箱型のケースをいかに効率よくアクリル板で作ることができるかということをだいぶ長い期間取り組んできました。

これまでのアクリルケースで作ってきたキーボード

凹凸で箱組みにしてみる(Fortitude60, 2018年)

Fortitude60 Beta

Fortitude60 Betaの裏側

初めて設計した左右分離型キーボードでもあり、ホコリの入りづらい箱形状のキーボードケースを持つキーボードがFortitude60です。このキーボードはアクリル板とプレートとPCB(素材はどちらもFR-4)の凹凸をはめ合わせることで構成されており、ネジすら不要という最初で最後の極まった設計です。

Fortitude60の構造

考え方としてはアクリル板による箱の作り方と基本的には同じで、お互いに設けた凹凸をはめ合わせ、プレートとPCBもアクリルに開けた穴に差し込んで固定する形になります。Fortitude60は頑丈に作ることができましたがあまりにも頑丈過ぎて分解できなかったり、角が鋭利過ぎて普通に痛いなどの問題点もでていました。

kou014.hateblo.jp

スペーサーを角に配置してみる(Tabula-TKL, 2020年)

Tabula-TKL

Tabula-TKLのチルト足

特にエッジがキンキンすぎるところを直そうとしたのがTabula-TKL(アクリルバージョン)です。Fortitude60のネジ無し構造は一旦諦め、上下の固定をスペーサーとネジで行いかつスペーサーを四隅に配置することで若干丸い印象を与えることを狙っています。

Tabula-TKLの構造

凹凸の組み合わせ自体は引き継いだ上にややアップグレードし、チルト角度をつけるための足などが付きました。ただ細い箇所が多く組み立てている間に折れてしまう事故が多発したのでこのアクリルバージョンのTabula-TKLはお蔵入りになりました。

3Dプリント部品との組み合わせ(Replicara, 2023年)

Replicara

Replicaraを横から見た図。左右のちょっと濃い部品が3Dプリントのもの

アクリル板ケースから一旦離れアルミ削り出しなどにうつつを抜かしていた頃、3Dプリント部品の外注も価格がだいぶ下がってきました。そこでアクリル板と3Dプリント部品を組み合わせることで更に自由度を上げたケースができるのではないかと思って作ったのがReplicaraです。

Replicaraの構造

3Dプリント部品はキーボードケースのエッジを丸くするために存在しており、平面部分をアクリル板が担当するといった形になっています。また角の曲線が連続してアクリル板につながるような形状にしたり、レジンの3Dプリント部品を染料で煮込んでアクリル板と近い色合いにすることでお互いのつなぎ目が目立たないようにしているのもポイントです。

ゴムブッシュを使ったマウント方法

更にキーボードのマウント方法もこれまでの2作品とは異なるアプローチを取っています。プレートにC型の突起を設けて、ここに配線をケースから出すためのシリコン製のゴムブッシュをはめ込みます。これにネジを通すことで簡単に外れないようにし、かつケース側への固定も兼ねたものにしています。ゴムブッシュを介していることでガスケットマウントのような、底打ちを軽減する事になり打鍵感の向上を狙っています。

おわりに

今回これまでアクリル板で作ってきたキーボードのケースを紹介しました。正直なところ現在では大型の3DプリントやCNCによるアルミ削り出しなどのコストが激下がりしてきたので、アクリル板を使って安く作れるメリットがそんなになくなりつつあります。しかしながらアクリル板が持つ透け感やカラーの豊富さなどの魅力はこれにしか無いので、他の方が作ったアクリル板ケースの凝った作品が見られると嬉しいです。

ちなみに余談ですが、アクリル板は帯電してホコリが付きやすいのでコーティング剤でコーティングすることをおすすめします。オススメはVuPlexで塗布すると帯電防止の他に手触りがトュルトュルになって非常に良いです。

この記事はTEX Shuraで書きました。明日は 機嫌を損ねたシェフ さんです。