ロードヒポキシス

可憐、無意識

5年ぶりにパソコンを新しくした

今回組んだメインPC

パソコンを新しくしたので記録のためにまとめておく。前回一新したのは約5年前。厳密にいうと途中でGPUなどを買い替えているので少し異なるが一新というタイミングはこれになる。今回の目的はWindows11対応と、メモリを含めインターフェイスを新しくしたかったためとあともう一つを目的に組んだ。これは記事で後ほど。

kou014.hateblo.jp

構成

Before After
CPU AMD Ryzen 7 1700 Intel Core i5-13600KF
メモリ Corsair DDR4-3200MHz 32GB (16x2) Crucial DDR5-4800MHz 64GB (32x2)
マザー Asrock Fatal1ty AB350 Gaming-ITX/ac MSI MAG B660 TOMAHAWK WIFI
CPUクーラー Sythe 虎徹 Mark II Noctua NH-U12A
SSD1 WD Blue SN550 NVMe 1TB PCIe Gen3x4 WD Black SN850 NVMe 2TB PCIe Gen4x4
SSD2 TOSHIBA 480GB SATA WD Black SN850 NVMe 1TB PCIe Gen4x4
SSD3 Patriot Blast 480GB SATA WD Black SN850 NVMe 1TB PCIe Gen4x4
VGA ZOTAC GAMING GeForce RTX 3070 Twin Edge <--
PSU Corsair SF600 (600W) Apexgaming AG-750M-JP (750W)
ケース Abee smart ES04 Fractal Design North FD-C-NOR1C-03

GPUだけ引き継いだほぼまっさらな環境です。

目的

Windows11が正式にリリースされてから1年が経ち、Ryzen7 1700が正式にアップグレードに対応していないのが理由の大きな割合を占める。性能的にも正直あと何年か戦えるスペックではある。しかしWindows11含む最新の環境にプライベートで触れていないのはどうかというところと、仕事でマイクロソフト相手に右手で殴りながら左手で握手するようなことをしているので早いところ移行しておくべきだと判断した。*1

前回のPCを組んでから約5年がたち、足回りの環境が結構変わってきた。まずはCPUが世代を重ね、対応するメモリの規格がDDR4からDDR5に置き換わってきた。実際の性能の差があまり(ベンチマーク上)ないことや、価格の高さ(2022年12月現在同じ容量で1.5~2倍程度)が要因としてDDR3→DDR4のような速度で移行が進んでいる感じではなさそうである。*2 しかし新しいのが好きなので今回メモリをDDR5に置き換えた。

次に重要視したのは外とのインターフェイスであるUSB Type-Cである。旧PCでもあるAsrock Fatal1ty AB350にもバックプレートにUSB3.0のType-Cが一つ装備されているが、まずバックプレートのI/Oポートなんぞマスストレージの接続で接続しづらいので使っていなかった。今回新しくしたMSI MAG B660 TOMAHAWKはバックプレート側のType-CはUSB3.2 Gen2x2であるうえ、フロント用にUSB Type-E*3が一つあるので、ケースの前面にType-Cを生やすことができる。これでType-Cのあれやこれのマスストレージが使いやすくなる。

パーツの選定

5年ぶりの自作PCというのもあり、Sandy Bridgeおじさんほどではないが最新の自作PC状況に疎くなっているので事前に結構調査をした上、最終的に購入したTSUKUMOexの店員さんにも相談した。

CPUはAMDからIntelに初めて移った。今までノートPCとかでIntelのCPUは使ったことはもちろんあるが、自作ではK6-2からAthlonからPhenom IIRyzenと渡り歩いてきたので実はIntelは初めてである。必要としている性能的にはRyzen 7000シリーズでもよかったが、Intelは12th Genからbig.LITTLEのアーキテクチャに変わり、Windowsのスケジューラの最適化が結構よいという話を見たのが決定的となった。ちなみに今回使用したCPUはCore i5-13600KFで、Performanceコアが6コア、Efficientコアが8コアの合計14コア、20スレッドである。どのみちGPUは外部のグラボを使うので内臓GPUなしのFモデルを選択した。

マザーボードIntel 12th Gen用のものを選択した。現時点で13th Gen向けのB760といったミドル-ローエンド向けのチップセットがなく、13th Gen用でかつDDR5に対応したものは高価であるためMSIのB660チップセットで売れ筋のこれにした。機能的な不満といえばPCIeスロットのレーン分割機能がないのと、NVMe RAIDに対応していないのがあがそこは割り切った。

メモリについては今回の目的の一つである64GB搭載を達成した。前のマシンでもマザーボード的にはサポートしていないが実力的には可能であった。しかしこのマザーボードで64GBを達成するには2スロットしかないのでDDR4で32GBのモジュールが必要であることから、いっそのこと4スロットある今回のマザーボードに移行して将来的に128GB(32GBx4)まで増設できること見越している。

SSDは以前のマシンからの移行も十分に考えられたが、現時点でGen4のNVMe SSDが価格的にもこなれてきたので新しくした。シーケンシャルリードが7GB/sを超えたので大満足である。ちなみに構成としては2TBのSSD1をシステムに、1TBのSSD2/3をWindows上でJBOD *4 にしてSteamのデータなどのデータ入れにしている。

ケース

今回買い替えするにあたり、ちょうどぴったりのタイミングでFractal Designから天然木を使用したNorthというケースがリリースされた。久々に欲しいと思ったケースでAmazonで予約が始まったタイミングで衝動的に購入した。 www.fractal-design.com

昨今のPCケースはおおむねゲーミングの方向性で、いろいろな部分が光る上サイドパネルが強化ガラスでスケスケだったりする。そんな中、一応Northはメーカー的にはゲーミングと言っているが家具のようなデザインなので一目で気に入った。ケース表面は粉体塗装のマットな仕上げで、前面パネルには天然木を使用して北欧テイストになっている。あと何よりメーカーのロゴが電源ボタンの刻印のところにシンプルについているだけというのが気に入った。トップパネルはツールレスで取り外し可能で、外すための取っ手部分には革が使われている。

ATXのミドルタワーのカテゴリであるので裏配線も含めて内部空間も広く、電源も表からは見えないようなカバーもついているため非常に組み立てしやすかった。光物も電源ランプだけでしかもデザイン的に控えめに光るのみでとてもよかった。以前のAbeeのケースは電源ランプが青色LEDで部屋を明るく照らしてくれるので後から減光の改造を入れないと使えなかった。

フロントパネル。左端が電源で右端が電源ランプ

Northのサイドパネルは金属のメッシュと、強化ガラスの両方がラインナップされている。前述のとおり強化ガラスは好まないのでメッシュにした。メッシュが白色で明るいというのもあり、中身はほとんど透けて見えることはない。メッシュなのでホコリが入り込む可能性があるが、強化ガラスモデルでも上部などから入り込むのでどのみち変わらないと思われる。黒いほうのモデルであれば強化ガラスでもよいかもしれない

サイドのメッシュパネル。Noctuaのベージュがわずかに透けるのみ

組んだ後の所感

正直前のPCで性能的に不満という不満はなかったが、アプリの立ち上げ時などが体感的に倍ぐらい高速化された。ストレージの速度が倍になったことの影響や、メモリが64GBになったのでキャッシュが減ったというのがありそうである。

不満いう不満はほとんどないが、ATX電源のファンが一番うるさいのが難点である。マイクに入り込むほどの音量ではないがちょっと頑張っている空気清浄機な感じがする(見た目も相まって)のでしばらく使ってまだ気になるようであれば交換するかもしれない。

またmini ITXからATXに大型化したので、拡張スロットに何を増やそうかと考えている。最も可能性が高いものはThunderbolt4である*5が、MSI向けの拡張ボードは日本で販売されていない(BTOにあるらしい)し、海外でもあまり数がないので購入の難易度が高い。モニターがThunderbolt入力を持っているほか、Dockで拡張をやってみたい。

この記事はVEGA E-White + MG Salmonで書きました。 おわり

*1:手順を踏めばRyzen第一世代でもWindows11のインストールは可能だが、無限に非推奨環境と怒られ続けるのといつこれを理由にアップデートが切られるのかわからない環境にしたくないためである。

*2:Intel 12/13thがDDR4にも両対応、AMD Rytzen 7000がDDR5専用だがCPUソケットも新しくなって全部買い替える必要があるのも影響か

*3:USB規格での名前ではないらしい。要はちゃんとシールドされたヘッダー

*4:Just a Bunch Of Disks

*5:デスクトップ向けのIntel CPUはThunderboltコントローラーが内臓されておらず外付けとなる。マザーボードに搭載されているモデルは10万円に近いのでちょっと無理だった。

ぺかそちゃんmeishi基板を作った話

この記事は キーボード #2 Advent Calendar 2022 - Adventar の21日目の記事です。

20日目は段々畑さんの「Blenderモデリングしたキーキャップの話」でした

scrapbox.io

Blenderは定期的に始めては挫折しているのでこれを操ってものが作れる人はすごいなぁという気持ちです。

今年はまとめじゃないの?

さてこのブログの一つ前の記事を見てわかるように、ここ数年は毎年この時期に一年のキーボード活動の振り返りをする場となっています。

今年も同じことをする羽目になるかと思いきや、今年はアレとコレが大部分を占めており、なおかつそれらは来るべき時が来るまで口外できず、万が一したら所有するキーキャップすべてを再生ペレットにされる契約書面に同意しているため同じノリで記事を書くことができなくなってしまいました。

というわけで今年は以下の「ぺかそちゃんmeishi基板」を作った話をします。

meishiとは

自作キーボードにおいてmeishiとは、びあっこ氏が設計し、現在は遊舎工房で初心者向けの自作キーボードキットの「meishiキーボード」からきています。元々は同人名刺からの流れでびあっこ氏が自己紹介するために作成した4キーのシンプルなキーボード基板です。自作キーボード=はんだ付けするやつみたいな風潮の強いこの日本において、ちょうどよいはんだ付け初心者向け練習としてベストセラーキットになっています。

このmeishiキーボードの功績にならい、meishiキーボードベースにカスタマイズするか各自約55mmx91mmのサイズの基板を設計し、1キー以上のキーボードとして動作するものを作る「meishi展」という奇祭が遊舎工房によって過去2回行われました。1回目は2019年に、コロナ禍があり間が空きましたが2回目が今年2022年に開催され、多くの人達によって個性の強いmeishiが展示されていました。

今回作成したものはその2回目のmeishi展に出店するために設計したものです。

名刺≒ネームプレート

今回、というか1回目もそうだったのですが名刺は名刺でも首から下げるネームプレートとして設計しました。というのも実際何かしらのイベントで文字通りの名刺として配る人も中にはいますが、正直かさばるし単価が紙のそれと比べて高いため個人的にはあまり好みではありませんでした。ならばイベントで見せびらかせられるように、かつオタク特有の顔が区別できないために首から下げるネームプレートのほうが使い勝手が良いのではという考えからです。(実際の名刺は紙でやりたかったし

余談ですがイベントのとき、顔だけで誰だと判別が本当にできないです。向こうから話しかけられても自分の視界の右上に表示される名前とその確度が良くて6割程度をふらふらしています。なので全人類首からTwitterスクリーンネーム書いた札を下げていてくださいお願いします。

meishiデザイン

というわけでmeishiもとい名札を作るため、必要な情報をまとめてみます。

  • ぺかそちゃん、一番重要。
  • 名前、一番重要。
  • 連絡先(メールとかURLとか)、一番重要
  • キーボードの回路、meishi展のレギュレーション的に一番重要

以上より構成を考えてみた結果、ぺかそちゃんを基板のデザインで表現する「レジスト芸」を使って表現し、かろうじてキーボードとしても動作する基板を作成することにしました。

基板で絵を表現するには

基板に絵を描く方法として、最も簡単なのは通常部品番号とかを乗せるためのシルクを使うのが一般的です。白色で一色だけの表現になりますが、基本的に画像一枚を変換して(基板CADツールのKiCadには画像から変換するツールが付属している)作ることができるので簡単です。実際2019年のmeishi展1回目はこの方法でmeishiのネームプレートを作っています。

もう一つの手法、というか上級者向けの方法として「レジスト芸」があります。レジストとは基板に塗られている緑色や赤色をしているインクのことを指します。通常は基板の表面を腐食などから保護するためのものですが、デザインとしてあえてレジストを塗らない領域を作ることにより、その下にある銅箔や基板の地の色を出すことができ、この色の差を使って5色程度の表現を行うことができます。

一方でこれを作るためにはやや難易度が高いです。KiCadでも作成するためにはファイルをメモ帳で手動編集しなければならない等面倒な作業が多いです。そんな面倒なことをやる人たちの行為を指して「レジスト芸」と呼びます。

レジスト芸の概念と実際の方法についてはe3w2qさんが詳しくまとめているのでそちらを読むことをおすすめします。

e3w2q.github.io

ぺかそちゃん on 基板

実際に今回レジスト芸をしてぺかそちゃんを基板上に作り上げていく過程を紹介します。まずはパワポを使って学生服のぺかそちゃんの絵を描きます。

ほぼ週刊キーボードニュースで使わなかったので全身は初出

次にmeishi向けにグラデーションや細かい装飾を取り除いて基板に落とし込みやすいデザインにしたものをPDFで書き出します。

目のデザインなど細かい部分は表現できないのでデフォルメする

PDFになったぺかそちゃんをイラレにぶちこみます。この時点でパワポのパスと塗りがいい感じに分離しなかったりしたりするので、ここを教団の秘術でなんとかします。

そして銅箔やレジストを避けるためのマスクと呼ばれるレイヤーにそれぞれ分け、画像として出力します。後はこれらをKiCadでシルク部品に変換した後、手動で各レイヤに書き換えKiCadに読み込み直します。そのあたりの手順は上で紹介したe3w2qさんの記事を参考にしてください。

その他の部品とともに出力

ネームプレートなので短辺上部にネックストラップを取り付けるための長穴を外形で入れました。

キーボード部分づくり

meishi展に出展するためのレギュレーションでは、「最低でも1キーのキーボードとして動くこと」とされているためキーボード回路をつくらないといけません。

ATmega32u4は単品で手に入らないし(持ってはいるけど)、Raspberry PicoベースでRP2040を使うのは大げさだなぁと思っていたところ、とある人から中華マイコンのCH55Xシリーズを紹介されました。このマイコンは安く在庫もあるし、最小レベルのパッケージ/製品であるCH552Eは10ピンでありながら内蔵クロックを持ち外付け部品がほとんど不要のままUSBデバイスにもなるというなんとも都合の良いマイコンです。しかもch55xduinoと呼ばれるライブラリを使うと、一部成約はあるもののArduinoと同じ使い勝手でプログラムできます。

github.com

実際に作った回路はこれ。スイッチとLED類を除いたら3.3V作るLDOだけでほとんど部品がありません。でもコレでUSBキーボードとして動きます。ちなみに最初は裏面のタクトスイッチだけの1キーで通そうと思っていましたが最後の最後で日和ってキースイッチのCherry MXとChocスイッチソケットを実装しました。しかし当日斜めの人さんがタクトスイッチだけで出してました。負けた。

meishi回路図

実装は無限に在庫を持っているUSB Type-Cコネクタを除いたすべてをJLCPCBにお願いしました。それでも1枚$6.5ぐらいでした。余談ですが今回緑色レジストで発注しましたがこれとは別に紫色レジストでも発注しましたがシルクがきれいに出ずに失敗しました。レジストの色によってはシルクのインクの乗りが全然異なるため、最もノウハウのある緑色以外を使う場合は要注意です。JLCPCBの場合は高品質シルクのオプションがあるのでもうちょっとマシになるかも?

3Dプリンタでフレームづくり

これはなくても良いのですが、紙とか柔らかいプラスチックのネームプレートとは違い、それなりに硬くて鋭利なエッジが首からぶら下がるのでやや危険です。なので3Dプリントで周囲を保護するためのフレームを印刷しました。色合いと丸いデザインのためにシリコンみたいで柔らかそうですが、普通のPLAなのでそこそこ硬いです。

完成

そんなこんなで完成したmeishi展向けの「なふだ」ですが、普通にイベントとかに毎回持っていっているアイテムになって気に入っています。おそらくコミケにも持っていくので来られた方はぜひ。原稿はまだ書いています。

この記事はHHKB HYBRID Type-S雪で書きました。