ロードヒポキシス

可憐、無意識

読書した: 野崎まど 「know」(ハヤカワ文庫JA)

久々に紙の本の小説を買いました。

と言っても普段から本を読まない人間ではなく、最近は過去に買ったものを読み直して見たり、ワゴンのkobo買ったら楽天ポイントくれたのでそれで買った本を読んでました。

漫画は昔から続けて買っている作品や絵柄が好きな人の作品は紙で買ってるけれど、どうしても今すぐ読みたいときにはkindleで買ったりしてます。1-Click万歳。

小説の場合はiPadで読むのはさすがに重いしkoboとかの電子ペーパーはリフレッシュのために暗転するとか解像度が漫画以上に気になるとかであまりすきじゃないので紙のやつを買ってます。

それと自分は新品でしか本は買いません。日焼けしたり古本の独特な臭いがあまり好きじゃ無いです。おそらく母の本棚の臭いが小さいころに苦手なものとして覚えちゃったからだと思います。

 

さて今回読んだ本はタイトルにあるように野崎まどのknowです。本屋に言った時にたまたま目についたのと自分の好みのあらすじだったので買いました。

know (ハヤカワ文庫JA)

know (ハヤカワ文庫JA)

 

町中の建築物や道路、挙句の果てに森林とあらゆるものに埋め込まれた無数の「情報材」と呼ばれる周囲の環境をモニタリングするセンサーで満たさた現代よりはるかに情報化された社会とその情報にアクセスし処理するために人の脳に埋め込まれた人造の脳葉「電子葉」というデバイスが一般的になったという設定の近未来の日本だ出てくるSF小説です。

 

 以下ややネタバレと感想

いわゆる「電脳」に近い(電脳とは違い外部からの情報処理に特化している)デバイスが出てくるSFモノなのですが、それだけをギミックにした単なるアクションSFではなく、現代でいう「ビッグデータ」とか「人工知能」に近いものによって世界にあふれる大量の情報がどのようにアクセスされ、利用されるべきなのか。より高度に、高速に情報を処理できる能力を獲得した人間による「知る」という行為はどうなるべきか、「知る」ことを極めた人間はどこへ行くのかという倫理的にも感じられるテーマを扱っています。

どの程度の情報にまでアクセスできるとか、逆に自身の情報がどこまで守られるのかという線引を一括した「ランク」というものが存在し、職種や経済状況で決まるランクが低いと文字通り丸裸にされるほど情報がさらされる超情報格差という問題が小説中にメインテーマとして出てきて未来でも日本は技術だけ先行して政府の政治的扱いが不慣れであることは変わらないようです。

序盤から中盤にかけて未来の情報の取扱い方について議論し、「ランク」の正体が判明するまで綺麗に物語が進行していたのですが、後半からは一気に加速してランク外のチートが出てきてチート同士の戦いが主になってしまい、ラストにあるメインテーマの超情報格差の解決の仕方が読んでいて「あれ?」となってしまったのが少し残念でした。個人的にはもっとエピローグが欲しかった印象。正直14歳の濡れ場はいらなかった。
しかしこういう設定のSFもので全体としてアクションに軸を置かずに書かれた作品はとても新鮮に感じました。