ロードヒポキシス

可憐、無意識

キーボードとUSBについて

この記事はキーボード #1 Advent Calendar 2021 16日目の記事です。 このブログ一年の締めくくりだけ更新される感じになっちゃってますね。

adventar.org

今回は内容的にはあんまりキーボード関係ないけどみんな使ってるUSBについて書いてみました。

USBってご存知ですか

正式名称はユニバーサル・シリアル・バスUniversal Serial Bus)、その名前の通り汎用的なシリアルバス規格として1996年に誕生しました。それ以来四半世紀に渡って高機能化し、身の回りの周辺機器デバイスでは一般的なものになりました。

そんなUSBはみなさんがお使いのキーボードにも使われています。「Bluetooth専用です!」とかケチつけなければ大抵USBで接続されるはずです。さてUSBとキーボードはとても相性が良いです。コネクタのサイズも丁度いいし、通信速度もそんなに必要ないし、消費電力も大きくないからおあつらえ向きです。

しかしながら近年自作キーボードが一般家庭に普及した[要出典]結果、やたらとLEDで光らせるような治安の悪いキーボードが目立ってきました。

↑治安がやや悪い例

これはお気持ちですが、キーボードに限らず世の中はUSBを「なんか5Vの電圧を簡単に取れるいい感じの電源」扱いしてるんじゃないかと思っています。自作キーボードで電子工作始めた方とかはあまりにカジュアルに電源入れてるのであんまり気にしてないかもしれません。

しかし一歩間違えるとキーボード壊すどころか根本のパソコンまで壊しちゃう可能性が無いこともないので、今回はUSBの「電源」について書いてみました。あんまり技術詳しくなくても明日からあなたの身の回りのUSBポートをいたわる気持ちになって貰えればと思います。

USBが扱える電力

USBはコネクタ、通信、電源に分けてもそれはそれで巨大な規格の集合になっているので全部書いていたら本ができてしまうし実際分厚い本は既に存在します。

そこからUSBの電源について至極ざっくり言うと、今でも多くのパソコンに付いていて四角くて向きがわからないことで有名なUSB Type-Aと呼ばれるタイプのUSBポートは、USB2.0で電圧が5Vで最大500mA(ミリアンペア)、USB3.0でも900mAです。

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ほぼすべての自作キーボードはUSB2.0で動いているので規格通りであればキーボードとして動いているそれは最大5V/500mAまでしか流すことが出来ません。

あまりピンとこないと思うので自作キーボードでよく使われるRGB LEDを見ると、実測で1個あたり消費電流は最大50mAです。単純計算でたった10個でいっぱいですし、キーボード分の消費電流もあるのでこれを考慮したら10個もつけられないです。

akizukidenshi.com

ここで「USB Type-Cってやつはパソコンも充電できるしこれよりもいっぱい光らせられるんだよね!」と思った奇っ怪な人もいるかも知れません。ちょっと丸くて上下の向きが関係なくて最近のパソコンは大抵ついているUSB Type-Cと呼ばれるコネクタ(USBポート)は、電源周りが拡張されてType-C Currentという規格で最大5V/3A(3000mA)まで流せるようになりました。

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ここで注意してほしいのは、Type-C Currentはあくまでポートの両側(パソコン側とキーボード側)がどちらもType-Cであることが条件です。これはより大きい電力を安全に使うために「ちゃんとType-Cでつながっているよね?」と確認する仕組みが入っているからであり、例えばType-A → Type-Cなケーブルを使った場合は普通にUSB2.0の最大500mAになります。

でも動いてるけど?

上記の消費電流の測定はRGBすべての色を最大の明るさで光らせたとき(=白色)なので、実際はみなさん思い思いの色で光らせているのでそれよりも低いですし、QMK Firmwareの中を見ると、RGBLIGHT_LIMIT_VALで最大の明るさを制限していたりする場合もあるので実使用上は問題ないことが多いです。

また、USBポートを搭載しているパソコン側も治安の悪い周辺機器が使われることを前提として電源周りを強力にしているパターンも多いです。結構前のAppleMacBook Pro光学ドライブが搭載されなくなった頃、外付け光学ドライブをケーブル一本で使えるようにするため数A流せるようになっているとかなっていないとか。

実際超えるとどうなるの

大抵の場合、パソコン側で設計以上の電流が流れた場合は保護回路によって遮断されてOSに通知がいく仕組みになっています。Windowsだと「USBポートの電力サージ」というポップアップが出てきたりします。

どちらかというとこれに引っかからないけどギリギリな電流を消費しているパターンが厄介かもしれません。パソコンメーカー各社もそういったことを考えて設計していないわけでも無いですが、あまり質の良くない設計だと余計な発熱をして無理に電流を流し続けた結果、じわじわと電源回路が劣化してある日突然キーボードを認識しなくなる…ことも。

そうでなくてもドッカンドッカン電力を食っていると挙動が不安定になり、切断と認識を繰り返してOSも不安定になっちゃったりするパターンもあるのでできるなら省電力であるべきです。

じゃあ壊れるのか壊れないのかはっきりしてよ

まとめると、今どき壊れることもそんな無いけど自作キーボードで消費する電流は大きくても500mAに収めたほうがいいよという感じの話でした。

今回は電流値の話をしましたが、LEDの光らせすぎとか関係なく自作キーボードの組み立て途中でうっかり金属の机に置いてショートさせちゃったとか、コネクタのはんだ付け微妙にミスってわずかにショートしてるとか自作ならではのトラブルも考えられます。

気になる人は「USBテスター」とかで検索して出てくるようなUSBポートに挟んで使うテスターで自分のキーボードがどれだけ電力を食うのか見てみるのも良いかもしれません。

なんかUSBハブついたキーボード作ってたじゃん(今年のまとめ)

正直現在進行系で忙しいせいで今年はキーボードあんまり作ってない感じの1年でした。そんなかちまちま作ってたのが「Tabula TKL」という名前のキーボードです。

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アルミ削り出しテンキーレスキーボードというこれまで(自分が)作ったことなかったキーボードを作ってみたかったのと、あんまり自作キーボードでもついてないUSBハブを付けました。

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Tabula-TKL(最終版)

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上の方にあるのがUSB2.0ハブの回路

個人的にはわりとよく出来たとは思ってましたが、正直余り面白くなかったのと、半導体不足でUSBの保護回路のICが無くなり、USBハブICも値段が5倍ぐらいになってしまったのでこのままお蔵入りです。かなしい。

来年こそはちゃんと面白いのが出せるといいなと思っていますがあまり出せるネタが無いのでUSBの話をしてしまいました。おわり

この記事はFortitude Pro Prototypeで書きました。

そして、キーボードを作る一人の人生の歯車が静かに狂い始めた2020 Winter Collection

この記事は「キーボード #1 Advent Calendar 2020」の17日目の記事です。

なんだか今年はいつもより確実にあっという間に過ぎていった感覚がありました。
何なら去年のAdvent Calendarを書いた手のぬくもりを感じるくらいです。部屋は去年と変わらず寒いですが。

この一年は方方で言われていますが例のアレでイベントの類がキャンセルされた影響で、他の人のキーボードに触れる機会が減ったのが残念でした。
代わりにTwitterやDiscordのコミュニティで写真を眺めたりして気を紛らわせていましたが、やはりリアルイベントにはかないません。
早いとこ安心してキーボードイベントができる世の中になってほしいものです。

今年はほぼ週刊キーボードニュースが2年目に入り(年が明ければ2周年ですが)、テレビに出たり、その他諸々でめちゃくちゃ忙しかったです。
なので今年のAdvent CalendarもTwitterのリンクをベタベタ張ったりした一年とキーボードの振り返りです。

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1月

ぺかそちゃん正月衣装

年明け早々に遊舎工房が福袋を発売したので買いました。来年もやるのかな

その福袋はキーボードニュースでリアルタイム開封しました。その中にGH60系の基板が入っていたので60%キーボードのケースを作り始めました。

そしてキーボードニュースが1周年を迎えました。ぺかそちゃんも衣替え

2月

佐渡ヶ島に行く(キーボード関係ない)

例のアレが大きく広まる前に最後に行われた(大きい)キーボードイベント「Keysounds」はこのときでした。
基本的に闇なので光るキーボードの重要性が再確認されました。

バレンタインデーにHHKB Hybrid Type-Sのレビュー記事が出る。

3月

1月からいじいじしてた3Dプリントでつくる60%キーボードのケース(というかキーボード)の「THIS IS KEEB」ができました。
長辺が30cmになると一般のご家庭に置かれている3Dプリンタでは印刷できないので、そのへんを頑張ってなんとかしたところが特徴です。
あとプレートがガスケットマウントになっていたり、中に鉛を詰めていたりと打鍵感/打鍵音にこだわった一品です。

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4月

ずっとあつ森してた

5月

あつ森とHelltakerしてた

6月

あつ森してた

と言いつつ5月ごろに「マツコの知らない世界」から突然のフォロー&DMが来てやんややってたのがここ数ヶ月です。
最初は電話で受ける受けないの話をしつつ、例のアレのアレが解除されたタイミングで番組のスタッフの方がやってきて取材などがされました。お菓子おいしかったです。

正直出る出ないの判断はキーボードニュースの制作の相方であるびあっこさんが出てくれるならまぁ…という感じでそこまで悩んだ感じではなかったのですが、その後のキーボードの選定がめちゃくちゃ大変でした。
なにせ番組は「20分かそこらでマツコさんにゼロからプレゼン」するものですし、テレビだから多くの人も見るはずで、とはいえキーボードはキーボードなので下手な主張をして大変な事になっても(なりましたが)大変につらいのでキーボードの選定にはめちゃくちゃ苦労しました。しかしながらマツコの知らない世界のプロデューサーの方もめちゃくちゃ下調べしていましたし、また自作キーボードの部分では遊舎工房やコミュニティの皆さんには水面下で手伝っていただき大変お世話になりました。本当にありがとうございました。

一方でいわゆる「自作以外の」キーボードについても選ぶのにとても苦労しました。先程述べたとおり短い番組時間と、その中で適切なキーボードを出さないといけない2つのプレッシャーがありました。ある意味救いだったのは日本のキーボードでは高級キーボードに位置するものに「Majestouch」「HHKB」「REALFORCE」が(一部の一般的に)認知されていたのでここは外せないという判断ができたことです。

むしろ一番最初に出すメンブレンキーボードを何にするかが一番悩んだと思います。なにせ最後の「自作キーボード」に持っていくためにはメンブレンキーボードを悪者にしないといけないわけです(富士通のLibertouchは話がややこしくなるのでナシに)。なのでメンブレンキーボードだけで特定のメーカーを出すのはイメージ的にも良くないのでメカニカルも出していて知名度のあるメーカー…ということでLogicoolさんにお願いしました。交渉自体は番組の方でやって頂き快諾していただけました。
あとメカニカルキーボードもスイッチの配分も悩みました。マツコさんに渡す順番を考えて最初はタクタイルで比較するとかリニアは後から出すとか色々決めていました。

7月

6月が嵐のように過ぎ去り、「マツコの知らない世界」の収録が7月7日に行われました。私は石川県に住んでいるので前泊する形になりました。
新幹線で爆睡しながら移動し、夜に到着してタクシーでホテルに向かい前日最後の打ち合わせをしました。めちゃくちゃに頭痛かったのを覚えています。

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ホテルの朝食おいしかったです。

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そして当日徒歩で赤坂のTBSへ…

横の屋外ディスプレイにマツコの知らない世界の次回予告が流れてビビリ散らかしていたのを覚えています。特にこの番組はマツコさんが興味を持つのがある意味のゴールなのですが、このとき流れていた次回予告が第三次世界大戦の火種になりかねない感じの主張をしてマツコさんにNoと言われていたので同じことになっていないか急に不安が襲ってきました。 前日にびあっこさんが読んだと言っていたマツコさんの本を読んで、少なくとも昔はライター業をしていてパソコンを触ったことがあり、普段もパソコン自体には触れているとのことで取っ掛かりは少しはあるだろうから大丈夫だと自分に言い聞かせてました。

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来てしまった…

後はもう事前の打ち合わせをしたら収録に入ってあっという間に終わりました。髭の跡を隠すためにスタッフさんにファンデーション付けてもらったりした後、目の前にマツコさんが出現してからはいっぱい喋った覚えはあったりなかったりしていつの間にか日が暮れてました。テレビと同じセットがあり、マツコさんが目の前にいる状態が非現実的すぎて不思議のアリス症候群みたいに空間が歪んでました。

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楽屋とぺかそちゃんとびあっこちゃんと番組に出せなかった50万円のHHKB Professional HG Japan

収録の間は全部絞りきった感じがしましたが、終わってみるとアレを喋ればよかったとか一人(二人)反省会が即開始されました。番組の進行的には台本は無くマツコさんの興味の赴くままに進んでいくのでうまくコントロールしないと時間切れになってしまうからです。特にスイッチテスターでいろいろなキースイッチを試させられなかったのが残念でした。TALP KEYBOARDさんのスイッチテスターに珍しいスイッチをたくさん付けて持っていったのですが残念ながら時間が足りず…
もし触らせることに成功していたらご家庭のキースイッチの認知が「赤軸」「茶軸」などから「Gateron Black上乳下黒にKrytox 105g0を塗布したスイッチはニッチャニッチャ」ぐらいには大きく進歩していたはずです。

talpkeyboard.stores.jp

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持って行ってたスイッチたち(一部異なる)

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お弁当のカレーおいしかったです。収録の前と後に2つ食べました(食べていいって言ってたので)

収録が終わってから放送までは予告が出たりなんだりとあった他は一瞬で過ぎました。これを通して思ったのは世の中に「いかがでしたか?」ブログが大量に涌くことでした。本当に適当なことしか書いてない…
放送当日はキーボードニュースも特別編を放送直後にやるという暴挙に出たため、祈るような気持ちで放送を見ていました。死…

結果的に多くの人に楽しんでもらえたようで良かったです。マツコの知らない世界のスタッフの方々も†良い編集†をしていただきありがとうございました。またキーボード界隈の方も協力頂いた方も大変お世話になりました。

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8月

デスクマット作ったりした

ぺかそちゃんが新衣装になる。プロのイラストレーターに依頼してちゃんとデザインしてもらったオリジナルです(これまでも自分でデザインしたオリジナルだけども)。かわいい

9月

Tabula TKLというテンキーレスキーボードを作り始める。最初はアクリル箱組での安価なケースという方針でしたがパーツが細かすぎて人類に組み立てが不可能ということが判明しお蔵入りしました。代わりに別の方向に向かっていくことに…

一回荷物がロストしたSusuwatariが届く。2年近くかかった…

10月

ヴァイオレット・エヴァーガーデン劇場版よかった

個人(のグループ)でやってる配信に、遊舎工房さんとPFUさんにスポンサーとしてついていただけるようになりました。以前より色々よくしていただいておりましたが、改めて良い情報発信をしていければと思います。

11月

kou014.hateblo.jp

人類に組み立て不可能と判断されたアクリルケースのTabula TKLはアルミ削り出しケースになって再登場しました。でもまだ形変わりそう…

12月

CADをいじったりPFUのイベントに出させていただいたりしました。

まとめ

今年は特にマツコの知らない世界でテレビ出演したのが一番影響が大きかった一年でした。キーボード的にもアルミ削り出しのいわゆるハイエンドキーボードの設計に手を出し始めたのが大きな進捗です。しかし振り返ってみると思ったより数作ってなかったなというのも感じましたし(半分マツコとあつ森してたからそれはそう)、来年はいい感じのバランスでキーボード作りも大きく進められればなと思います。Fortitude Proの話は掘り返さないでください。本人が一番覚えてます。

この記事は「Tabula TKL(プロトタイプ)」で書きました。

おわり